バーでもセンターでも、ならぶ位置は先生によって厳格に決められる。

基礎がしっかり身についた、動きの美しい子が中央であり、前なのだ。

そしてみんなの前で見本を示すに値する優等生がひっぱってこられて

お手本を示す。中に一際目立つ、綺麗なX脚の子がいた。

動きのひとつひとつが美しいのだ。私の目はずっとその子にくぎづけ。

だって、きれいだったんだもの。動きが。

 

これこそがバレエなのねー

うちの子のは体操もどきだったんだわと、カルチャーショックの母をしりめに

こどもAは長い時間レッスンできることが嬉しくてたまらないと上機嫌。

長く複雑なアンシェヌマンも喜々とこなしていた(らしい)

ああ その他大勢でわからなかったんだけどね。母は。

先生が一瞥もくれないんだから、つまりそういうことなのだ。

一抹の寂しさといいもの見たという興奮のせめぎあいであった。

 

5日間に渡る講習会、家の都合で4日目を受けたら帰ることになっていた。

こどもAにとって最終日。

定刻にお稽古場入り。私はあいかわらず2階からの見学。

冷房なしのその空間は決して快適ではなかったけれど、私も含め見守る大人たちの

視線は一様に熱かったと思う。

そして、その日はとりわけ暑かった。

頭が煮えたぎっていたような錯覚。額をつたって流れる汗。

来てよかったんだかなんだか。

いや この現実をうけとめるべきなのよー。

ただこどもの「バレエ大好き」というお祭りに母も便乗していたんだわねー。

もうそろそろ、目ェさまさなきゃー

なんだか、もうろうとしてきた。うー観光もろくすっぽしてないー。

ま いいかー

動いてるわが子の方が数段暑かろーなーと頭ぐるぐるの私の目に、

先生にひっぱり出されて、センターの中央でお手本を見せる

ブルーのレオタードがとびこんできた。

いったい何がどう違うってのか。(違うけど)

聞けるもんなら聞いてみたいもんだー、ふんっ!!。

目はしかとその対象をうつしているのに

暑さにボケてる頭は1拍遅れてた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・!!

その時の気持ちをどう言ったらいいだろう。

そのブルーのレオタードはこどもAだった。

 

冗談ぬきにあたりの色彩ががらっとかわった単細胞は私です。

自分のことではこんなに喜べやしない。

いくつかのパをお手本でやってみせたこどもAに、工藤先生の言葉。

「君は膝がのびるともっとよくなるよ」

そうなんですよねー

膝だけじゃない。脚全体だー。

不必要な力を入れて余分な筋肉がついているとか。

で、どうしたらのびるかが、いまだに彼女の大きな課題。

なんでそれを聞いてこなかったんだ、いや即答できることじゃないと

本人はしごく冷静に受け止めていた。

もうちょっと続けてみようか。もう少しがんばったら何かまた別のものが

見えてくるかもしれない。と親子で話したものの、当人は「?」てなものだった。

こどもAにとってバレエのお稽古はすでに生活の一部だったから。

 

 

後日、「バレリーナへの道」でその時の記事を読んだ。

「伸びやかなキープ、流れるようなライン フランス・バレエ独特の優雅さ」

ほんとにそうだった。